切り捨てられた居室
仮に、三○戸で一棟のマンションを築後七年の段階で五億円で購入したとしよう。家賃を月一○万円とすると、満室状態であれば毎月三○○万円の収入となり、年間では三六○○万円の収入となる。全入居者が住み続けてくれたとすると、一三年二カ月で五億円となり、購入資金を回収できることになる。しかし現実には、購入資金を銀行から借り入れて金利の負担があるというのが多くのマンション・オーナーであろう。また、常に入居状況が安定し、全室満室という状態はなかなか期待できるものではない。一~二年で入居者が入れ替わる際に発生する費用もある。さらに、外観イメージをよくするための修繕コスト、水回りなどのメンテナンス費用、管理人の人件費など、多くの維持経費を含めると、とても一三年二カ月で計算通りに資金回収することは不可能だ。Sさんは結露対策の改修費用を出せないため、結露の激しい部屋は空室にした。これはきりのない改修がもたらす経済的損失を軽減するためだが、次はその上階や隣部屋で同じ問題が発生してくることになる。その先に見えてくるものは何なのだろうか。マンションの中に切り捨てられ、見捨てられた居室が次々に生まれてくる。その居室はいつしか結露をそのままに外気温と同調し、マンションそのものを内側から冷やす冷暗室になる。上下左右にこうした室内を抱えた住居は暖房費が増加して省エネ性が低下し、結露もまた助長させることになる。時間とともにマンション全体のエネルギー性能と居住性が低下し、ついにはマンションのスラム化に直結していくのである。
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